
百貨店の催事の片隅で出会った、染め作家さんの糸。
色落ちたような深みのある紫から、どこか冷たさを残した淡い青へ。
光の加減で、ところどころ潜んだちいさな金のラメが、消えそうにチラチラと輝く。
何度も何度も、丁寧に染めを重ねたからだろうか。
手に取ったとき、糸の撚りが少しだけゆるくなっていることに気づいた。
既製品のように均一ではなく、どこか頼りない佇まい。
扱いやすくはないかもしれないけれど、その不揃いな優しさに触れたとき、
「あ、これはわたしが手に取らなきゃ」と思った。

ほどけてしまいそうな糸をなだめるように、そっと針を通す。
選んだ文様は、紫陽花刺し。
縦、横、斜め。
針目をいくつも潜らせていくたびに、ゆるい糸がふんわりと布の上で膨らみ、優しい影をつくっていく。
強く引き過ぎれば、繊細な表情が消えてしまう。
だから今日は、いつもより少しだけ手元を緩めて、糸の機嫌にゆだねてみた。
出来上がったコースターの上で、大人びた紫が影になり、淡い青が光になり、金がひそかな光をひろう。
整った完璧な糸じゃなくてもいい。
歪さも、頼りなさも、全部抱えて針を動かす時間が、今日のわたしには、とても愛おしかった。


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